COFFEE / COLUMN / CALL
ARTICLE ID / the-button-we-stopped-pressing公開済み原文の抜粋
押すのをやめたボタン
古い建物のエレベーターには、ときどき返事の遅いボタンがある。
一度押す。光らない。もう一度押す。強く押し、念のため連打もする。なぜか指の力で機械を説得できる気になる。
それでも来ないので、階段を使う。
一日だけなら偶然だと思う。翌日も動かず、管理人に伝えても「確認しておきます」と言われるだけ。そのうちボタンを押さなくなる。
やがて修理が終わる。しかし、それを知らない人は今日も階段へ向かう。壊れていたのは機械なのに、人のほうが「押しても無駄だ」と覚えてしまう。