よく忘れるために
「忘れる」と聞くと、記憶が衰えたように感じる。
ここでいう「よく忘れる」は、大切なことを消すことではない。あとで戻れる場所へ記録して、覚え続ける負担をいったん下ろすことだ。
買う物を紙へ書けば、牛乳や洗剤のことを一日じゅう考えなくてよい。約束を暦へ入れれば、何度も時刻を思い返さずに済む。考えごとをメモへ置けば、「忘れないように」と握っていた注意を、目の前へ戻せる。
WHYなぜ記録すると忘れられるのか
記録には、思い出すための手がかりが残る。
全部を頭の中へ置かなくても、「どこを見れば戻れるか」が分かっていればよい。これは記憶を捨てることではなく、置き場所を決めることに近い。
梅棹忠夫の著作目録には「忘れるために書く」という題の文章がある。カードやノートは、何でも覚えるための倉庫というより、頭を次の観察へ使える状態に戻す道具だった、と読むことができる。
BUT何でも残せばよいわけではない
いまは日記、写真、検索履歴、クラウドなど、本人が忘れたあとも記録が残り続ける。
残すと助かる記録がある一方、昔の失敗や不要な情報まで消えずに残ることもある。歴史を忘れないことは必要だが、人が変わる余地まで過去の記録で塞いでよいわけではない。
何を覚え、何を手放し、いつ見直すか。必要なのは記憶容量の大きさより、記録の編集なのかもしれない。
TRY一枚だけ、外へ置く
いま頭の中で繰り返していることを、一つだけ紙へ書く。
解決策や美しい文章は必要ない。「金曜日に電話する」「この問題は来週考える」だけでもよい。あとで戻る日を決めたら、紙を伏せる。
記録したことで、目の前へ注意が少し戻ってくれば成功である。
TOOL SHELF小さな道具棚
- 一枚の紙
- 消してもよい鉛筆
- あとで戻れる置き場所
SYNAPSESつながる窓
- TIME:記憶、忘却、持続
- HUMAN:変わる権利、赦し
- TECHNOLOGY:検索履歴、クラウド、外部記憶