誰が、その物を動かせるのか
博物館に収められた物には、そこへ来るまでの経路がある。
発掘された物、贈られた物、買われた物、戦争や植民地支配の中で持ち出された物。その経路を確かめると、「現在その博物館が所有している」という情報だけでは分からない関係が見えてくる。
OWNERSHIP持っていることと、見せてよいこと
博物館にとっての資料が、由来する人びとにとっては祖先、祈り、墓、儀礼と結びつく物である場合がある。
法的に所有していても、公開してよいとは限らない。写真撮影を避けるべき物や、共同体の一部の人だけが扱える物もある。
所有権、公開する権利、物について説明する権利は、同じではない。
RETURN返すだけが答えなのか
不適切な経緯で持ち出された物については、元の場所や共同体へ返す「返還」が議論される。
ただし、関係を結び直す方法は返還だけではない。展示説明を由来する人びとと書き直す。画像を公開しない。研究データを共有する。共同で管理する。物によって必要な対応は異なる。
大切なのは、博物館だけで結論を決めず、その物と関係を持つ人が判断へ参加できることだ。
LABEL展示ラベルの外を見る
展示ラベルには、名称、年代、地域、材質などが書かれている。
そこへ「誰が持ってきたか」「どのような合意があったか」「由来する人びとは現在の展示をどう考えているか」が加わると、その物は孤立した標本ではなく、続いている関係として見えてくる。
収蔵は、物の動きを完全に止めることではない。誰が次に触れ、語り、必要なら返すことを決められるのか。その問いを保管する仕事でもある。
TRY展示を見る三つの質問
- これは、どこから来た?
- 誰の言葉で説明されている?
- 必要になったとき、戻る道はある?
SYNAPSESつながる窓
- MUSEUM:収蔵、展示、返還
- HISTORY:植民地、交易、戦争
- POWER:所有、同意、語る権利